【第3回・最終回】家庭でできることと音楽療法の始め方を音楽療法士が解説
- 豊留 侑莉佳
- 11月7日
- 読了時間: 9分
音楽療法についてお伝えしてきたシリーズも今回が最終回です。
「家で何かできることはないの?」「音楽療法を受けるにはどうすればいいの?」といった実践的な疑問にお答えします。

前回の記事:
今回インタビューした先生

お名前:オダシマ先生
所属・肩書き:多機能型児童発達支援施設やさしい森のポロ 常勤音楽療法士
プロフィール:現場で日々子どもたちと向き合いながら、一人ひとりの個性に合わせた音楽療法を実践。保護者の方と共に子どもたちの健やかな成長を願いながら、音楽の力で子どもたちの可能性を引き出すことに情熱を注いでいる。
目次
家庭でもできる音楽活動はありますか?
編集部:
前回まで音楽療法に関する一般的な知識や、その効果についてお話しいただきましたが、「家でも何かできることはありませんか?」という質問をよく受けるのではないでしょうか。
オダシマ先生:
そうですね。保護者の方には、先生にならないでほしいというのが一番の願いです。ご家族にしかできない、お子さんとの愛着形成があります。お子さんとのふれあいの時間を、楽しみながらもっていただけるといいなと思います。
編集部:
家族だからこその役割があるということですね。
オダシマ先生:
はい。ご家族が歌や楽器が好きで、一緒に楽しんでいるという話を聞くことがありますが、素敵だなと思います。自然な形で一緒に楽しむのが一番ですね。
編集部:
では、もし家庭で何かするとしたら、楽器を用意したりした方が良いのでしょうか?
オダシマ先生:
そんなことはないです。お子さんとスキンシップをとりながら、好きな歌を歌いかけてあげることは、とても大事なことです。
編集部:
楽器もいいですが、スキンシップが大切なんですね。
オダシマ先生:
そうなんです。抱っこしている大人が、子どもと呼吸を合わせながら歌いかけてあげることで、子どもが安心感の中でしっかりと自分自身の体を感じ、心と体の緊張が解けていく、そういう感触や感覚を双方が感じとることができると、愛着形成にもつながり、とても良いふれあいの時間になると思います。それは、楽器や音楽経験がなくても、すぐにご家族ができることでもあるし、先生がやるよりも何倍も良い影響があります。
編集部:
なるほど。昔からお母さんが子守唄を歌いながら抱っこして、ゆらゆらと揺らしている光景がありますが、ああいうイメージですか?
オダシマ先生:
まさにそうです!あれは実は、すごく意味があることだと思います。少し難しい話ですが、自分の身体を感じるということと、揺れを感じる感覚(前庭覚)が未発達だと、刺激に弱くなったり、情緒を安定させることが難しくなるんです。ゆったりと揺れを感じることは、発達においてとても大切な要素です。
編集部:
そんなに深い意味があったとは知りませんでした。
オダシマ先生:
前庭覚を刺激することは、身体のバランスや、気持ちのバランスをとる力につながります。ハンモックとかゆりかごとか、昔からあるものには意味・根拠があってのことだったんです。そこにスキンシップや歌があると、気持ちの安定に、より良い影響をもたらすと思います。そんな経験をして成長できると良いなと感じます。
編集部:
具体的にはどのような効果があるのでしょうか?
オダシマ先生:
愛着形成や、情緒の安定ですね。発達にアンバランスさがあるお子さんは、感覚が混沌としていて、感じた刺激を処理することが苦手な場合があります。刺激を受け入れられるようになるために、まずは自分自身の体をしっかりと感じさせてあげるというのはとても大切です。他者とコミュニケーションをとる時には、まずは自分の情緒が安定してないと難しいです。だから、情緒を安定させたり、緊張をほぐしてあげたり、安心させてあげるというのはコミュニケーションの基本にもなる、とても大切なことなんです。
音楽療法はいつから始めるのがベストですか?
編集部:
そういった家庭でのスキンシップも大切にしながら、実際に音楽療法を始めるとしたら、いつ頃からが良いのでしょうか?
オダシマ先生:
気づいた時にいつからでも始められると思っています。前職では、2〜3歳からという子もいれば、中学生から、時には40代で初めて音楽に出会う方にも接してきました。
編集部:
40代の方まで!幅広いんですね。
オダシマ先生:
実際に高齢者施設でも音楽療法が行われているように、年齢に制限はないと感じます。今目の前にいる方に、フィットするプログラムを提供するのが音楽療法士の役割なので、受ける方のタイミングによる早いや遅いはないと思います。人それぞれ生活してきた環境も経験してきたことも異なるので、それも踏まえて受ける方の理解を深めたいと思っています。ルミウス(当施設)は未就学のお子さんが対象なので、発達に重点を置いて見ることが多いですが、成長によって様子がどんどん変わっていくので、その時々で必要なアプローチも変わってくるんです。
保護者も一緒に参加できますか?
編集部:
いざ音楽療法を始めるとなった時、保護者も一緒に参加できるものなのでしょうか?
オダシマ先生:
はい、できます。保護者の方の参加の有無を考慮してプログラムを作るので、受けて下さるお子さんやご家族のニーズになるべく対応したいと思います。
編集部:
親としては「参加した方が良いのかな?」と悩む方も多そうですが、どうお考えですか?
オダシマ先生:
それは本当にケースバイケースですね。希望はお聞きした上で、保護者の方とお子さんの様子を見ながら提案するということをしています。
編集部:
様子を見ながら判断していただけるんですね。
初回の相談や見学では何をしますか?
編集部:
実際に音楽療法を検討している方が初めて施設に来られた時は、どのような流れになるのでしょうか?
オダシマ先生:
まずはイメージを持ってもらうために、実際に利用している方の様子を見てもらうことにしています。そこでスタッフの関わり方や施設の雰囲気を見てもらって、利用したいかどうかを判断してもらいます。
編集部:
見学する内容は決まっているんですか?
オダシマ先生:
なるべく、見学にいらっしゃるお子さんと年齢が近い利用者さんが活動している様子を見ていただくようにしています。「うちの子だったらどうかな?」というイメージが湧きやすいと思うので。
編集部:相
談の時はどのようなことを聞かれるのでしょうか?
オダシマ先生:
音楽療法に興味を持たれた理由、お子さんが好きなこと、得意なこと、どんな力を伸ばしたいか、などをお聞きすることが多いです。お話を聞きながら、私たちに何ができるかを考えてお伝えするようにしています。親御さんの率直な思いを聞かせていただけるとありがたいです。
音楽療法を受けるにはどうすればよいですか?
編集部:
このブログを読んで音楽療法に興味を持った方は、どうすれば良いでしょうか?
オダシマ先生:
ポロにご連絡いただければと思います。一般的に音楽療法士は、フリーで活動している人が多いので、常勤で音楽療法士がいる施設は珍しいと思います。
音楽療法に興味を持った保護者の方へメッセージ
編集部:
最後に、このシリーズを読んで音楽療法に興味を持った保護者の方にメッセージをお願いします。
オダシマ先生:
お子さんの可能性を拡げる体験のひとつとして、まずは気軽に体験に来ていただければと思います。
編集部:
「気軽に」というのは大切ですね。
オダシマ先生:
お子さんの様子を見ていて、「この子はもしかして音楽が好きなのかな?」と感じた、など、きっかけはそのような感覚で大丈夫です。あまり経験することがない療法だと思うので、まずは体験していただければと思います。
編集部:
他の専門職の方からの紹介で来られる方もいらっしゃるんですか?
オダシマ先生:
ありますね。例えば、言語聴覚士の先生から「言葉でのやりとり以前に、音楽の中での表現や、やりとりを経験したら伸びるのでは?」と、ご紹介いただいた方もいました。
編集部:
専門職同士の連携も大切なんですね。
オダシマ先生:
そうですね。それぞれの専門性を活かしながら、子どもの力を伸ばしていければと思っています。
まとめ:音楽療法で大切なこと
3回にわたってお届けした音楽療法についてのインタビューシリーズ、いかがでしたでしょうか。
今回のインタビューで特に印象的だったのは、「ご家族には先生にならないでほしい」という言葉でした。音楽療法士として専門的な関わりをする一方で、ご家族にしかできない愛着形成の大切さを重視する姿勢に、真の専門性を感じました。
家庭でできる最も大切なこと
楽器を用意することもいいですが、抱っこして歌を歌ってあげる、一緒に揺れる、そんなシンプルなスキンシップが子どもの情緒の安定につながります。昔から続く子守唄の文化には、ちゃんと根拠があったのですね。
いつから始めても遅くない
子どもから大人の方まで、その人に合ったプログラムを提供できるのが音楽療法の強みです。「気づいた時がベストタイミング」という言葉が心に残りました。
まずは見学から
実際の様子を見ることで、お子さんに合うかどうかを判断できます。親御さんの参加についても、柔軟に対応してもらえるので安心ですね。
施設見学・相談のお申し込みはこちら
音楽療法について詳しく知りたい方、お子さんの様子を実際に見てもらいたい方は、お気軽にお問い合わせください。
こんな方におすすめです
「うちの子、音楽が好きかも?」と感じている方
言葉でのコミュニケーションの前段階として音楽での表現を試してみたい方
集団が苦手だけど何か参加できる活動を探している方
他の療育と組み合わせて、お子さんの可能性を広げたい方
📞 お電話でのお問い合わせ:0183-55-8661
🛜 フォームからのお問い合わせ:https://www.yasasiimori.com/info
🏢 施設見学は平日・土曜日に対応しています
音楽療法士の常勤はレアとのことですので、ご興味のある方はお早めにご連絡ください!
この記事は現役の音楽療法士へのインタビューをもとに作成しました。お子さんの発達について気になることがある場合は、専門機関にご相談することをおすすめします。
やさしい森のポロでは、秋田県湯沢市を拠点に、お子さん一人ひとりに合わせた療育や児童発達支援、放課後等デイサービスを行っています

見学やご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。地域の皆さまと共に、お子さんの成長をサポートしてまいります。



コメント